各地に残る伝統品種

 

 日本では、それぞれの地域に根ざした様々な伝統品種が存在する。今回は、それらの中でも全国的に有名になったもの、及び変わり種工房で扱っているものを紹介する。

京野菜

日本の伝統品種の中でも京野菜は最も有名なものの一つではないだろうか。京野菜はその名の通り京都府内で作られる野菜のことで、中でも「明治以前の導入の歴史を有する」等5つの条件を満たす41種類※1の野菜が京の伝統野菜である。現在では全国的に栽培されるようになった「京水菜」や「伏見甘長」(唐辛子の一種)、特殊な方法で栽培される「えびいも」「堀川ごぼう」などがある。

当農ゼミでは「京壬生菜」「聖護院大根」を扱っている。

 

沖縄野菜

沖縄県は琉球王国時代から伝わる独特な野菜が多い。

最近では全国的な知名度を誇る「ゴーヤー(ニガウリ、ツルレイシ)」をはじめ、「青パパイア」や「島らっきょう」、「島人参」などの品種が存在する。当農ゼミで栽培した「赤毛瓜(モーウィ)」「島唐辛子」も沖縄野菜の一つである。

 

加賀野菜

加賀野菜は石川県の金沢に伝わる伝統野菜品種群で、金沢市農産物ブランド協会は「昭和20年以前から主に金沢で作られ続けている」15種類をブランド認定して生産振興と消費拡大を図っている。「加賀太きゅうり」、「加賀れんこん」、「五郎島さつまいも」などがある。

当農ゼミは「打木赤皮甘栗南瓜」を栽培している。

 

山形野菜

山形県にも独自の品種が多く存在する。特にカブの品種は多く、当農ゼミでも栽培した「南沢カブ」、「牛房野カブ」、「次年子カブ」の他にも「温海カブ」や「肘折カブ」等10種類以上知られている。また、全国的知名度を誇るダダチャ豆※2や当農ゼミで栽培している「赤根ホウレンソウ」も山形野菜の一つである。

 

今回は都合上ほんの一部の品種しか紹介できなかったが、他にも江戸野菜やなにわ野菜等、全国各地に非常に様々な品種が伝わっている。

固定種や伝統品種に関する話は今回で終了。次回からは主に採種に関わる植物の生理学的な話を解説していく。

 

※1絶滅した3種、京の伝統野菜に準じる野菜2種を含む。

※2本来ダダチャは平仮名だが、JA鶴岡が商標登録しているためここではカタカナに変えてある

○参考文献

もっとからだにおいしい野菜の便利帳 白鳥早奈英 板木利隆 2010年 高橋書店

http://www.kanazawa-kagayasai.com/kagayasai/index.html 

加賀野菜について 金沢市ブランド農産物協会

http://www.e-kyoto.net/special/169 

京都観光ポータルサイト e-京都ねっと 京野菜とは

 

本当はもっといろいろ紹介したかったのですが尺の都合上ここまでとしました。言ってしまえば当ゼミで活動するうえで重要かといわれるとそれほどでもない…という内容ですし。

でも、調べてみるとホントにおもしろい作物が各地にあるんです。北海道の特大キャベツ「札幌大球」、80cm近くになる人参「国分人参」、一時は栽培が途絶えたものの種がみつかり復活した「勝間南瓜」、一方で資料こそ残っているものの現存しない「郡大根」(絶滅した京野菜のひとつです)……

上記の資料で分かる範囲でもこれ以上の品種たちが紹介されていますが、もしかしたら文献にはない幻の品種がどこかにまだ眠っているのかも…と考えるとワクワクしませんか?

……しないか。では今回はここらへんで。